2013-02-04

NHKのドラマ「メイドインジャパン」を見て

週末にNHKのテレビ60周年記念ドラマ「メイドインジャパン」の第一回、第二回を見た。第三回は次の土曜日に放送の予定だ。

【ドラマのあらすじ】
円高、欧州債務危機、中国・韓国等新興国の追い上げ。
製造業が軒並み危機を迎える中、巨大電機メーカーが、「余命三か月」の倒産の危機に追い込まれた!
会社の命運を握るのは、営業、財務、工場の現場で先頭に立ってきた3人の男。
かつて世界中でテレビを売りまくった営業マンが、会長の特命でリーダーとなり、
秘密裏に七人の「再建チーム」を結成。起死回生の倒産回避に奔走する。
 
だが彼らの前に、一人の日本人技術者が立ちはだかる。
男は営業マンの盟友だったが、会社をリストラされ壮絶な過去を経ていた。
今、男は己のリチウムイオン電池技術を武器に、自分を切り捨てた友へ宣戦布告する。
「技術は誰のものか」という争いの中、日中の巨大企業の激突が始まる・・・。
 
日本人にとって、会社とは、人とは何なのか?
「メイドインジャパン」は生き残ることができるのか?
―ドラマは戦後の日本を支えてきた物づくりの意義を問いつつ、逆境を乗り切ろうとする日本人の姿から、 「メイドインジャパン」とは何かを正面から見据え、描いていく。
あと一回残っているのでどういう展開になるかは分からないが、二回までを見て何か引っかかるところがある。それは今の時代に「メイドインジャパン」にこだわる必然性があるのかという点だ。今の時代に日本が「メイドインジャパン」の看板を掲げようとするのは、現代においてイギリスがかつての大英帝国の復活を叫んでいるようなものではないだろうか。ようするに「メイドインジャパン」のタイトルには過去の栄光にしがみつこうとしているようなイメージがある。

物語は、巨大企業において開発中止に追いやられた日本人の技術者が、その技術を中国の会社で製品化し、巨大企業がその技術を巡り、争い、倒れそうになっている巨大企業の経営を再建するという話で、あの会社のこと?と感じさせるほどリアリティがある。

余命三ヶ月の巨大電器メーカーの会長もよくよく見ると、あの会社の創業者に似ていないとも言えない。NHKもフィクションだと言いながら、誰もが「ああ、あそこね」と想像できるようなドラマにしていいのかなと思ったりする。

「メイドインジャパン」に対する違和感は、ドラマが“日本”にこだわっているところにある。ちょっと癖のあるそれぞれの分野のスペシャリスト7人が会長直轄の極秘の経営再建チームを構成し、会社のピンチに立ち向かっていく。ドラマのその流れ自体はよいとして、かつて栄えた巨大企業が「メイドインジャパン」を掲げて復活するというのは、あまりにも単純なシナリオでドラマを見ている読者にいろいろ考えるきっかけを与えていないような気がする。

※つまらないことだが、中国企業の社長やドイツの会社の役員と日本のメンバーが話をするときは英語にして訳をテロップで出した方がリアリティがあったのではないか。通訳を介して日本語で話しているところがイマイチだった。

言語の問題はあるにせよ、今はSNSを使うと海外の人、海外の技術者とすぐに友達になれる。もの作りもいろいろな国の技術、部品が使われている。そう考えると「メイドインジャパン」は最終製品を組み立てた国がたまたま日本だったということでしかないのではないか。税金を納めたのが日本だったというだけではないだろうか。

ドラマ「メイドインジャパン」では、日本的な経営手法と中国の新興企業の経営手法の違いも描いていたが、エンジニア個人としては経営の方法にはあまり興味は感じない。ただ、中国の新興企業の社長が製品の品質に無頓着であるように描かれていたのは「それは良くない」と思い、引っかかった。しかし、iPad や iPhone を台湾の鴻海グループが高品質で大量に生産できているから、日本人しか高品質なものは作れないというイメージはステレオタイプのような気がする。

だから「メイドインジャパン」じゃなくて、日本の良さ、例えば世界一厳しい目を持つ消費者がいるとか、きめ細やかな配慮が得意とかいったところが活かされる、日本にこだわらないグローバルな企業に発展するというストーリーにした方が良かったのではないかと思う。

ドラマもドイツの会社が融資してくれそうなことになっていたので、第三回でドイツの会社が経営に乗り出してくるのかもしれない。ただ、だからといって外人が来ると日本の会社の経営がうまくいかないというストーリーはあまり好きではない。そういう環境であっても、日本の良さを活かした製品作りが実現できて、世界の市場に受け入れられるというシナリオにして欲しい。

まあ、次の回でそういう展開になるかもしれないけど。

住んでいる国は簡単には変えられないけれど、世界中とコミュニケーションできる世の中になったので、「メイドインジャパン」と閉じこもろうとするのではなく、「視野を外に広げてもよい商品、世界に受け入れられる商品は作れるよ」といったメッセージを発信したほうが将来の日本のためにもなったのではないだろうか。今読んでいる「ワーク・シフト」の描く2025年の世界の様子がまさにそんな感じに思える。

ただ、巨大企業がいったん傷を負うと影響が大きいということは事実だと思うので、そこそこの大きさの組織でグローバルな人や組織間の関係を保ちながら、自分のスペシャリティを活かせるようになっておかないとまずいなと「メイドインジャパン」を見ながら思った。

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