2006-06-25

組込みソフトエンジニアの情報検索能力は低い?

インターネットが普及した現在では、学生が大学のレポートの宿題のテーマをインターネットで検索して探した文章をコピペ(Cppy & Paste)して提出するらしい。

検索した論文をコピーして教授に提出したところ、何か見たことのある文章だなあと思ったら、教授自身の論文の一節を学生がそれとは知らずにコピペしてレポートにしていたという嘘のような笑い話もあるとのこと。

ただ、いまの時代、「情報を暗記していること」自体の価値はかなり薄れているのかもしれない。昔なら、あの人に聞けば何でも知っているという価値は高かったが、今では 検索サイトを使って知りたいことを上手に検索すればかなりのことがインターネットでわかる。分からないことを人に聞くというシステムをインターネットで実現した「はてな」のサイトもある。

しかし、インターネットに載っている情報はガセネタも少なくない。雑誌に記事を書いたり本を書いたりする経験をするようになって分かったが、たったひとつのことを書くにも「裏取り」の作業が必要になるということだ。うろ覚えの内容をそのまま書いてガセネタになると自分の信用を落としてしまう。

ソフトウェアでもハードウェアでも同じだが、品質を高めるにはコストがかかる。かかったコストを回収するためには、高い品質の資産を再利用する必要がある。雑誌や本はかなりの部数が発行されるので再利用効率は高い。

また、雑誌や本はメディアとして多くの人々が購入し、そこには対価が発生するため、書いていることに対する責任が編集者や著者に生じる。

ところが、インターネット上に載せる情報の多くはタダで見られるので、そこに書く情報の品質を高める努力をすればするほど、情報提供者はかかったコストを自分の「持ち出し」でまかなうことになる。

ふつうに考えれば、情報の品質を高めるために使ったコストにはなんらかの対価がなければいけない。それは、広告を載せることでの収入かもしれないし、自分の文章が多くの人に読まれるということで欲求が満たされるという心理的な対価かもしれない。

さて、組込みソフトエンジニアも日々パソコンを使い、時にはインターネットで情報を検索しているはずだ。でも、日々の活動の中に自分の知りたいことや困っていることの解決方法が、インターネットの中にあるかも知れないと考えたことがあるのだろうか?

20年前、10年前はインターネットが発達していなかったため、職場の先輩や同僚に分からないことを聞いたり、本屋にいって知りたいことが書いてありそうな雑誌や本を買って読んだりした。

そのような環境で育った技術者がプロジェクトマネージャとなり、部下に問題解決の方法として上記のような「知っている人に聞く」ことしか教えていなかったら、もしかすると部下はインターネットの中に問題解決の答えがあることに気がつかないかもしれない。

組込みソフトエンジニアはドメインに特化した技術が必要なため内に内にこもりがちだ。自分の環境の外にある知識や情報に自分達のドメインの問題解決に使えるネタがあるとは思わない。

しかし、これだけ情報の共有化が進み、検索のしくみができあがってくると、世界中に同じような問題にぶち当たって解決のヒントを情報発信してくれている人がいるかもしれない。

また、自分自身が問題と問題の解決について情報を発信していけば、その情報によって助かる技術者が世界中に何人かはいるに違いない。

そう考えると、冒頭に紹介したレポートをコピペする学生も、インターネットの情報検索リテラシーを少しは身につけているということで、その後の役に立つかもしれない。

部下にうんちくを披露して、後で「インターネットにもっといい解決策が載っていましたよ」と言われないように、ベテランエンジニアも情報の検索能力を高めておくことをお勧めする。

0 件のコメント: